もの編

 いざ急性白血病と診断された時、血液検査で偶然初期に発見できた場合は入院準備ができると思います。でも症状が現れてから入院する場合は日単位で悪化するので緊急性が高く、病院のベットの空きがあれば選択の余地なくその日のうちに入院せざるを得ません。生き物がいるので一瞬躊躇したのですが、ベットが空いていて受入れて貰える幸運を捨ててはいけないと思いました。家族に頼れる場合はいいのですが、一人暮らし等では着の身着のままとなります。私の場合は保険証以外一切の準備がなく、レンタルパジャマを借りていいのかどうかの判断もできず、点滴を付けられたら着替えもできずに汗だらけになって一晩ベットに転がっていました。

 入院に必要なものをどう確保するか、留守宅をどうするか、仕事の整理はどうするのか、入院生活費の捻出や限度額適用申請証等、社会保障の申請ができるのか、誰に頼れるか、突然、病気による命の不安だけでなく、問題が山のように起こります。先ずは頼れる人探しだと思います。それも1人では負担が重すぎて無理なので、身近な頼める人にお願いして一つでも協力して貰う事になりました。寛解導入療法の入院時は手元金さえ、知人からお借りしなければどうにもなりませんでした。
 そして病院の制度にもよりますが、インターネット環境があればパソコンを使える方はネットバンク(振込用パスワードをお忘れなく。但し貴重品の保管は最低限の設備しかないと考えて対策をしてください)や普段使うネットショップのリンクやパスワードが入っていれば手伝ってもらうことが少なくて済みます。私は友人のすすめでPocket Wi-Fiを6ヶ月間レンタルしました。行政等の連絡先も調べられます。病院にネットショップの購入品や手紙などを送ってもらっても大丈夫か事前にを確かめましょう。私の場合は友人宅に送らせてもらってお見舞いの時に持ってきて貰いました。本を読める時は良いですが何も出来ない時、無料映画等を観れると気分が落ち込まなくて済みます。

肌に優しい下着

パンツ、ショーツなど
 リブではなくシンプルな平織りのソフトなもので、気軽に交換できて洗えるお財布に優しいものをおすすめします。皮膚が敏感になります。特におしりです。体調が悪くなければ、昼間はベットの上に座って一日を過ごすことが多くなると思います。常にベットと接触して体勢を移動させると皮膚が擦れたり、引っ張られたりするので擦れが起こりやすくなります。これが白血球が少ない時期に起こると治り難く、汚れやすい場所なのに皮膚のバリアーがなくなるので感染が起こりやすくなります。体を清潔に保つことも大事です。

ランニング、肌着など
 これもリブではなくシンプルな平織りのソフトなもので、気軽に交換できて洗えるお財布に優しいものをおすすめします。手持ちがあればそれで充分です。病院は概ね室温を調節できるようになっていると思います。肌着は夏用のランニングやタンクトップ等で点滴の管が24時間付いていても、上からではなく、下にさげて脱げるゆとりのあるものが便利だと思います。前開きの下着は準備しなくても問題ありませんでした。

パジャマ

 個人的な感想としてはレンタルの方が楽だと思います。マイパジャマを使われる方もレンタルパジャマを借りられる方もいらっしゃいます。最初はお財布を考えてどちらにしてよいか迷ったのですが、点滴や輸血、発熱等でびっしょり汗を掻くこともあって1日に一枚のパジャマで足りないことがあります。毎日、交換すると洗濯代がかさみ荷物が多くなります。レンタルだとその点、定額の中で交換してくれます。

靴下

 病院は乾燥します。カビや細菌の繁殖を防ぐためですが、昼間は春秋用の靴下を履いたほうがいいと思います。

タオル

 洗顔をしたり、入浴をしたりする時のタオルです。好みでマイタオルを使用するかレンタルするか選択していいと思います。但し普段なら極端に感じることと思いますが、治療のため、タオルを衛生的に使うには一回毎に替える意識と使ったタオルを室内にそのまま放置しないことです。ボディタオルも同様です。
 洗った手やコップ、果物等を拭く時は備え付けのペーパータオルを使います。ふきんや雑巾等は細菌が増殖しやすいので使いません。

洗濯代の100円玉と洗剤

 病院によって異なると思いますが、入院した病院には病棟ごとに入院患者用のコインランドリーがあります。ここでは洗濯は1回300円で乾燥が30分100円です。乾燥は少なくとも1時間はかかり、概ね1回あたり100円玉が5個必要です。1ヶ月も入院するとその間に概ね10回程度は洗濯が必要で100円玉が50個必要なことになります。これも寛解導入療法時には友人に集めてもらって両替しました。
 洗剤は病院の売店でも購入できました。

抗がん剤治療で抜ける髪の毛対策

 抗がん剤治療をすると失うものがあります。その一つが髪の毛です。急性白血病は治療をしないと発症から数ヶ月で死に至る病気です。髪の毛が抜ける時や抜けた後の姿にショックを受けるかもしれませんが、2年程で元に戻るそうです。 
 
個人的には「剃髪をしたらどんな姿になるか」を試してみた気持ちで大らかに構えるようにしています。人それぞれ気持ちがいちばん楽に過ごせる考え方を編み出せればいいなあと思います。

 寛解導入療法の入院時に看護師さんに「全部すっかり抜けるのですか?」と聞くと、「残っている人を見たことはありません」と言われたのですが、2回目の抗がん剤投与が終わっても、まだふわふわと触るぐらいには残っています。全部抜けて綺麗に生えそろってきて欲しいと思うと、逆にそれが少し気になります。髪の毛が抜ける理由は、抗癌剤ががん細胞のように成長の最も早い細胞に対し作用するからです。髪の毛は成長が早いのです。そしてある時、ばさっと抜けるようになり大量の髪の毛が排水口に溜まります。それがショックだとおっしゃる方が多いようです。

 早期発見で髪を切る時間があったり、病院に散髪ができる場所や出張してもらえたりする場合は5cm程度は長さを残してカットしてもらうといいと思います。緊急入院の場合で病院に散髪屋がないと髪が長い方は自分で切らなければなりません。私は髪が長かったので大量に抜け始めた時、シャンプーで抜けた髪が抜けない髪に絡まって塊になりました。ほぐす事も外す事もできず、仕方なく持っていた事務用のハサミで10cm程度の長さを残して全体をカットしました。無理だと思ったのですが、事務用のハサミでも切れ、まつぼっくりのようになった髪型も悪くはありませんでした。

 血小板が少ないのでカットには細心の注意が必要です。頭皮を傷つけたり、手を切ったりすると出血が止まりにくいですし、感染に注意しなければなりません。間違ってもご自分で剃髪はしないでください。あまり短いと肌を傷つける危険があるのと同時に、短すぎる髪がベット等に散らばると厄介です。

コロコロ
 看護師さんもやってくれますが、ベットは気づいたらコロコロを使って自分で掃除します。個人差があるかもしれませんが地固療法2回目はベットに落ちても拾えるくらいしか落ちなかったので、以降は荷物を減らすためには不要かもしれません。普通サイズで2巻位で足りました。床に落ちた髪の毛やバスルーム等、ベット以外は免疫が低下しているのでご自分ではしないでください。

ケア帽子とかつら
 抗がん剤を使って1週間程で髪の毛が抜けはじめます。ネットを検索すると沢山のケア帽子があります。こだわりがあって到着まで待てれば気分転換にもよいと思います。私は最初オーガニックのケア帽子を購入しようと思ったのですが、買いたかったインナーキャップが常に売り切れで対応がよくなかったので、結局、病院の売店で売っているケア帽子とネット状の使い捨てインナーキャップを買いました。

 ケア帽子は2つ買って洗い替えしています。ネット状の使い捨てインナーキャップは髪の毛が落ちるのを防ぐ目的のようですが1、2回使ってやめました。概ね帽子を被っている時に抜けるのではなく、洗髪やブラッシング時に抜けます。帽子についた髪の毛は手で取り除けます。頭皮も敏感になって私は手で触ると多少の痛みを感じるくらいですので、そのインナーキャップを被ると痛くて困りました。無くても充分大丈夫だと思います。

 剃髪と書きましたが振り返ってみると、どう対策をするかに相当あれこれ悩んだように思います。私以上に周りが心配してくれました。先生は「かつらを用意した方がいいですよ」と言ってくださったのですが、親しい人に相談すると励ましを込めて「かつらも楽しいよ」という人もいましたが、「あなたには似合わないわよ」つまりするタイプには思えないという意見もありました。

 お洒落で楽しむのは全く別だと思いますが、抗がん剤治療の場合は治療目的ですので身体や心に優しいということも大事な要素なのではないかと思います。
① 病気を隠していないこと
② ケア帽子のインナーキャップでもヒリヒリとしたこと
③ 髪の毛がないところに固定する医療用のカツラは本人がお店に相談にいき、髪の状況によって調整しなければならないこと
④ 良いものはそれなりに高価なこと等
を考えてそのお金を他のものに使うことにしました。落ち着いたら、お洒落なケア帽子も買って2年間を過ごします。私自身は無菌室から出られなかったので、友人達が代わりに情報収集をしてくれました。本当に感謝しています。

 いまは沢山のがんの患者さんがいて隠さないという選択肢も取り易くなったと思います。周りに助けてもらうには相談できる環境が必要です。カツラもその人の生き方で選択することができるのが大事なのではないでしょうか。

ヘアブラシ
 寛解導入療法と1回目の地固療法の途中まではヘアブラシを使いましたが、それ以降使っていません。髪の毛が残っていても絡まり易く肌の刺激になりました。絡まった時に無理に抜けてしまうのでそっと手で触って絡まったところをほぐしたりします。

シャンプー・リンス
 特別なものを用意する必要はありませんが、肌に優しいものがいいと思います。リンスは記憶が曖昧なのですが地固療法に入った頃から要らなくなったと思います。急性骨髄性白血病では問題が起こらなければ、寛解導入療法は約1ヶ月半、地固療法は1ヶ月程の入院になります。大量キロサイド療法では一時退院を含めて5ヶ月程の期間になります。髪の毛が少なくなるので使用する量も減ります。2日に1回洗っても50mlの旅行用が2本あれば、最終的な退院まで持つのではないかと思います。

口腔ケア

 白血病でなくても身体の出入口のお口とおしりは大切な場所です。口の中にも沢山の細菌がいて免疫力の低下とともに増殖し、病気を引き起こすこともあります。白血病治療はこの免疫力が低下する状況を乗り越えて治療していくので、口腔ケアはとても重要な課題です。入院前に歯科検診を受けて歯石除去等をしていたので状態がよかったのですが、定期的に検診を受けていると慌てずにすみます。治療中は白血球数に限らず、抗がん剤等の影響で口内炎ができやすくなります。口内炎は生活の質を低下させるだけでなく,栄養障害や口内炎自体が病原菌の体内侵入の門戸となります。(論文;急性骨髄性白血病治療時の口内炎に関する研究 吉田将律他より)正しい口腔ケアはそれらを予防します。大阪市立大学医学部附属病院 血液内科・造血細胞移植科ホームページに詳しい説明を見つけました。リンクを御覧ください(「血内うがい」の言葉は「血液内科のうがい」の略でしょうか)。
「血内うがいをしましょう」

柔らかい歯ブラシもしくは電動歯ブラシ(毛は必ず柔らかいもの)
 抗がん剤投与後は血を止める役割の血小板の数が少なくなっています。その状態で出血すると治るまでに時間がかかります。また細菌等感染のリスクがありますので、必ず柔らかい歯ブラシに換えましょう。食事前、食事後、寝る前の1日5回磨いても発熱時などには丁寧に磨けなくて、汚れが付着し落ちなくなりました。特に夜寝る前と朝起きた時は重要だと思います。夜の内に口内細菌が増えているので、朝そのまま食事をすると飲み込んでしまうことに。最低限、マウスウォッシュだけでもした方がよいそうです。病院でも口腔ケアはしてくれます。それでも寛解導入療法の際はは口内炎ができそうになりました。2回目の地固療法前に手頃な電動歯ブラシを買いました。磨き方に慣れるまで少しかかりましたが、口内炎は以来、まだ出来ていません。但し、白血球が少ない時期は手磨きした方がいいです。使用した歯ブラシはよく洗い、ペーパータオルで水気をよく拭き取って乾燥させます。

舌ブラシ
 舌についた舌苔を取り除きます。舌の上に着いた白色または黄色のコケのようなものが舌苔です。死んだ細菌や粘膜のはがれた細胞、食物ののこりかすなどです。専用の舌ブラシを濡らしてできるだけ舌を前に出し、気持ちが悪くならない程度に舌の奥までそっとブラシを入れ、舌の奥から前に向かって軽くで動かします。舌ブラシも使用後はよく洗い水気を切って乾燥させます。

歯磨き粉
 特別な問題がなければ、いつもの歯磨き粉でいいと思います。
下記のマウスウォッシュと姉妹品の ペプチサル ジェントル トゥースペーストもあります。

マウスウォッシュ
 病院で勧められました。アルコールを含まない低刺激でお口の中の殺菌作用があります。歯磨き後に必ず使用しています。ただほのかなキシリトールとペパーミント味なのですが、抗がん剤治療中で味覚が変化していると苦く感じたりします。そこはちょっと我慢です。
ペプチサル ジェントル マウスウォッシュ

プラスチックマグカップ
 熱が出ると手元が不如意になったりします。歯磨き用にはプラスチックのマグカップが落とした時も安全です。

お肌のケア

 病室、特に無菌室は細菌や真菌(カビ)、ウィルス対策として湿度が低く設定され乾燥しています。肌に何もつけないでいるとあっという間に乾燥してひび割れやフケ様の皮膚の剥落が起こります。そこから細菌感染する可能性もあるのでしっかりと保湿します。病院では匂いのない血行促進・皮膚保湿剤ビーソフテンローションを処方してくれました。ただローションは11、12月の無菌室では保湿しきれませんでした。その為、持参したロクシタンのシアハンドクリームを全身に塗っていました。
 でも抗がん剤治療中は、普段使っているクリーム等でも匂いに敏感になって使えなくなるという事があるようです。その後、ビーソフテンクリームがあるということを知ったので、そちらを処方して貰いました。匂いが一切なくて乾燥しません。入院期間が長いのでたっぷり使えるようおおきめサイズを処方して貰いました。
 顔については洗顔できればした方がさっぱりと綺麗になります。それでも熱が高い時等の為に洗い流さないタイプの洗顔化粧水が少しでもあると便利だと思います。只それだけで暫く過ごすと角質が溜まってしまいましたので、体調が良くなったら洗顔へ戻しました。化粧水と保湿できる美容液もしくはクリームは必需品です。

ボティクリームとハンドクリームとリップクリーム
ビーソフテンローションとクリーム

ボディソープ、洗顔料、洗い流さないタイプの洗顔化粧水、化粧水、美容液もしくはクリーム、コットンパフ、めん棒(白血球が少ない時期の耳掃除はしないでください)

爪のケア

 全ての治療が終わって退院した頃、爪が欠けるようになりました。そうなるとちょっとしたものに引っかかって更に割れたりします。見ると、横縞が出来ていました。何本も平行して出来ているので、明かに抗がん剤投与の影響だと推測できました。その時に作られた部分がダメージを受けてもろいそうです。爪が延びて横縞部分が先端に来ると割れてしまうのです。

 また抗がん剤の副作用で髪の毛が「抜ける」と言うけれど、投与中に成長した生え際部分は爪と同じで弱いそうです。それで抜けるのではなく、生え際でぽきっと折れてしまうそうです。

 ケアとしてはOPIのAVOPLEX(アボプレックス)シリーズのネイル&キューティクル補給オイルがよいみたいと教えて貰いましたが、残念ながら今夏リニューアル予定で手に入りません。それでできるだけ自然なものでお気に入りを探す事にしました。

その他

strong>手鏡
 相部屋でも無菌室でも鏡は一つしかありません。ベットで一日中過ごす事が多いので手鏡があると便利です。私は顔の傷のチェックに使用しました。

化粧品・歯磨き用品入れ
 無菌室に入ると看護師さんが毎日、除菌シートを使って手で触る所を拭き掃除してくれます。取手がついている無印良品のボックスなどを使ってまとめておくと、手間を取らせずに便利です。

以下のものは持参若しくは買ってきて貰ったものです。必要な方だけご準備ください。
 出来るだけ荷物が軽く嵩張らないよう小型の物を用意したり、代用品で済ませたり、持ち込まないと決める事も大事です。気持ちが保てる為に必要なものはある方がいいと思います。病院で持ち込んではいけない物もあるので確認しましょう。

  • iPhone,iPad,ノートパソコン、レンタルWi-Fi
  • フラットファイル(入院関係資料と長期入院中に支払った領収書等を整理)、ファイルケース、クリアファイル、ペンケース、小型穴あけパンチ、ホチキス、クリップ、付箋、封筒(A4書類用、お礼状用)
  • ティッシュボックス、ウェットティッシュ
  • タオルケット(病院の布団だけでは体温の上がり下がりに対応しきれませんでした。あると便利です)