コラム:白血球回復の気配は感じられるか?

 看護師さんに闘病記を書いていると話したら、「私たちも知りたいことがあるんです!」と勢いよく返ってきた。
 つまり私達、患者は様々な体験をする。看護師として病気によってどんな症状が出るか知識としては知っていても、実際に体験した事がないから、患者がそれをどう感じているのか知りたいと思っているのだそうだ。それが分かれば看護師さんが経験した別の事に当てはめて、その気持ちになって対処ができる。

 その第1回のお題は、白血病における「白血球回復の気配は感じられるか?」だ。これは言葉にするのが難題だ(笑)。

 治療中、抗がん剤により細菌やウィルス等の侵入と闘う白血球の数が最低レベルになる期間が1週間から10日間ある。その後、骨髄の中で新しい白血球細胞を造り、正常値へと回復する。お題はその最低レベルから白血球が作られ始めた変化を体感できるか、できるとしたら何を感じるかだ。骨髄の中でがん細胞が増殖して行き、正常な白血球がゼロになる前に命を落とすのが白血病。自然な状態で白血球がなくては細菌等と闘えず、命を保っている事自体ができない。無菌室があり、白血病の治療が可能になって初めてこのお題は生まれたと言える。

 体感したのは熱がなくても何処かが悪くなくても、風が和いだ湖面のように変化がなく重たい印象。反面、感染や熱、傷など悪い方にアクセルが入ってしまうと、ブレーキがかからずに何処までも行ってしまう怖い感覚。普段、免疫力があれば多少の事は意思の力で回復して行く安心感があるだろう。それが全く通用しない。お尻に傷ができて擦れて痛い。薬をつけても変化があまりない。熱が出て、解熱剤を飲んだり、点滴をしたりして一時的に下がっても薬が切れると熱が上がる。上がり切った熱が、昨日より今日と更に1度ずつ上がっても何処まであがるかわからない。
 白血球の数が増えてくると、微かに意思の力が働き出す。傷が自然に治って行く。熱が出なくなる。身体を動かせば回復する。体中に意思の力が満ちて動き出す。喩えれば、植物が眠る凍てついた冬が白血球がない状況で、寒さの中で芽が僅かずつ成長し始める気配がタイトルの感触。一気に芽吹き始めるのが回復のイメージだ。普段の状況の中で置き換えれば、何らかの病気で高熱が出たとする。最初、熱は一気に上がる。辛くて布団の中で汗をかきながら、いつかは治るだろうと思っているとなかなか熱が下がらない。早く治って欲しいと願をかけているのに変化がない。これが白血球最低レベル時期の状態。そのうち熱が下がり、ふらふらしながらも気力を振り絞って動き始めると自然と回復してくる。
 其れでも両者は近く見えるが、本当の意味では全く違う。免疫力があれば必ずバックグラウンドで働いている。意思の力は効いていないようで実は効いている。白血球ゼロはそれがない。私の感じた印象では普段、免疫力がある時よりも、抗がん剤による白血球ゼロの状態から回復してくる場合の方が静かにゆっくりと意思の力と噛み合って立ち上がってくるようだ。白血球の数と連動しているイメージだろう。

 辛い思いをしている患者からすると、医師や看護師は患者の痛みまでも知っていると思いがちだ。だが医学的に説明でき治療出来ても、数値や観察などで推し量る事しかできない。患者を理解したいと思ってもままならないもどかしさが医療現場にはあるのだろう。
 だから辛い時だが、体の変化に感覚を澄ませ、感じている事を少しでも、そして早く伝える事が大事だ。それが治療の結果につながるだけでなく、知見の蓄積が看護の質にもつながる。
 抗がん剤治療の3回目、4回目もじっと耳を澄ませ、此処に書き加えたい。より繊細な感覚を持たれている方はもっと細微な変化に気づかれるのかもしれない。
 宜しければ、どうぞコメント欄に御体験をお寄せください。

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