白血病とは関係ないが更年期を迎えると空腹時血糖が高めになり、毎年1kgずつ平均体重が増加した。母の兄弟姉妹が糖尿病という家系を意識していたから、何とか一念発起して1日平均1万歩を目指すウォーキングとラジオ体操で体を動かした。iPhoneのダイエットアプリを使ってバランスの良い食事も心がけ、甘味や炭水化物は総量を抑えていた。仕事をするには個食と言われても、料理と食事にかける時間を無制限に費やすわけにはいかなかった。料理はきちんとする方だったし、栄養バランスを心がけているつもりだったが、タンパク質や果物を節約した結果、炭水化物に偏っていた。甘いケーキも好きだった。
ここ1、2年は体重が安定して緩やかな管理になってしまったが、梅雨前の5、6月は初夏のように暑くなる。疲れを感じるとアイスクリームが毎日食べたくなった。夏の風物詩だった麦茶のように冷蔵庫で冷やしたアイスティーを飲むと飛び上がる程、歯が滲みた。熱い料理も同様で嚙みごたえのある肉やパンを食べると歯が抜けるのでは無いかと感じた。
7月12日。歯医者に行き「最近、知覚過敏があるんですけれど、年齢的な歯茎の後退のせいですか?堅い物を噛んでも痛いです」と伝えると、いつもの歯石除去と虫歯チェックの他に痛んでいる歯周辺のレントゲンを撮って確認してくれた。何ら異常がなかったので、先生は「右上の歯の裏側2カ所が軽い歯槽膿漏だから、血が出てもいいからよく磨いてねー」と言った。歯は元々丈夫な方で、余り苦労した事がなかったから年齢を意識して郷愁の風に吹かれながら帰宅した。歯磨きの際、出血するようにもなっていた。
知覚過敏は益々酷くなり、熱い物を飲んでも、冷たい物を食べても「ひやん!」と飛び上がる。いつのまにか前頭葉の額部分に強い頭痛がする。普段、葛根湯くらいしか飲まなかったのに何も出来なくなるほど辛かったので、市販の鎮痛剤を飛びつくように買って飲んだ。鎮痛成分の少ないものは、頭痛が残って日常に支障が出るので1日で切り替えざるを得なかった。午前中は鶏たちの世話と卵の調整出荷をし、薬を飲んで昼寝をした。効いてきた頃に他の仕事を出来るだけこなす。40分くらいで終わる出荷調整作業に4時間かかったこともあった。12時間毎に薬を飲む。そんな日が2週間ほど続いた。「夏バテと極度に疲労が蓄積したのだろう」と病気だとは考えもしなかった。
暫くぶりに母から「9月中に隔週2回、農産物直売所の販売当番をして欲しい」と言われた時、思わず「できない!」と言い放ってしまった。意識せずに無理なことを避けようとしたのだろう。緊急入院する2日前に歩いて片道約20分の友人宅に卵を配達した。「痩せたんじゃない?」友人は言ったが、体重が減ってはいなかったから深く考えることもなかった。