1−3 歯医者と婦人科を往復して

 9月2日、婦人科に定期検診に行った。更年期後半になってまだ子宮筋腫がずくずく成長していたので、心配で良性悪性の確認をしていた。予約システムがあって診察の順番は整理されているし、先生や看護婦さんも慣れてテキパキ仕事をされているのに、いつも待合室は満杯だった。

 今回は気になっていた事があった。女性にしか想像できないが、7、8月の月経量の最も多い日にふたつき続けて『多い日の夜用ナプキン』を昼間でも2時間ごとに交換しなければならないような状況が2日間続いた。それで予約の日が待ち遠しく感じられていたのである。「先生、気になるんです」と言うと、「んーそれはちょっと気になるわね。貧血の検査もしましょう」。「え?先生、生理が終わっても貧血は続くんですか?」と言いながら、婦人科の検査の後、看護婦さんに採血をして貰った。結果を見て先生は飛び上がったように「何故こんなになっちゃったの!」と声を上げた。去年11月末の国民健康診査では貧血の値に問題はなかったはずと考えていると、先生は「もしかしたら血液の病気か感染症の疑いがある。検査結果が1週間で出るから、婦人科の原因が無いかどうか確定してから考えましょうか」と言われた。もしこの後直ぐに、先生がどうしても気になって連絡してくれなければ手遅れになっていたかもしれなかった。急性骨髄性白血病の入院治療が無事終わってから、残されていた時間を聞いて、これがひとつの運命の分かれ道だった事を知ったのである。この2日後に紹介状をもたされて病院に行き、その日のうちに入院したのだが、余命は既に1週間程だったのである。
 いつも上品に話される先生が心配な事がある時、心底蒼ざめた顔をされる。医療に関わる人には様々な意見があるだろうが、先生は本当に心配してくださっていると感じる。結局は信頼関係だ。それで大丈夫だった時はホッとするのだが、「今回は違う気がする」と思いながら帰路についた。

 翌3日は知覚過敏に耐えられず歯科の再予約をしていた。先生に益々酷くなり頭痛もすると訴えると、歯茎が後退してしまった部位の一時的なケアともう1度、虫歯とヒビが入っていないかを確認してくれた。結局何の異常もなく、先生に頭痛の話をすると「それは歯医者じゃなく他のお医者さんに行ってね」と言う。納得できないまま爆然と「歯に関係する痛みじゃないのね」と次にどうしたらいいのかを思いつくことも出来なかった。

 歩いて西荻窪駅周辺に戻り、銀行の用事を済ませるともう夕食を作る気力も無かった。未だ17時前だったので大戸屋で食べられそうなものを探すことにした。西荻窪は個人店が多く、ファーストフードチェーン店以外は早い店で17時半、一般的に18時からディナータイムが始まる。それに痛みに耐えながら食べられるものが無いとダメで、店選びをする気力さえ失せていた。考えてみると自炊が億劫になり外食が増えていた。8月6日に友人のナミさんと吉祥寺で食事した時、「痩せた?」と言われた。不思議に思いながらも直ぐに忘れてしまった。

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