1−4 現れている症状だけで病名を推測する事は出来ない

 大戸屋で食べている時に知らない携帯番号からの着信があった。普段なら出なかったかもしれないが、何となく虫が知らせた。急いでできる限り迷惑にならない出口に行って電話を取った。「やっぱり数値が気になって。紹介状を書くから。明日は休診日だから明後日の朝出来るだけ早く取りに来てください。その足で大学病院に行って!何でもなかったら笑って帰って来ればいいから」と先生は一気に言った。その気配に「只事じゃない」と考えた。

 白血病は結局、現れている症状だけで病名を推測する事は出来ない。だから私の場合、8月に検診を受ける事にしていなければ、先延ばしにいていれば、婦人科で質問をしていなければ、先生が適切な判断をしてくれなければ、手遅れになった可能性が高い。最初の頼みの綱は血液検査だ。そして素早い判断。

 「血液の病気か感染症。でも感染症だけの症状とは思えない…」。家に帰るとiPadをひろげ、「白血球数多い」「貧血」「頭痛」等のキーワードを検索窓に打ち込んだ。ずらっと画面に並んだ検索結果は急性骨髄性白血病のものばかりだった。信頼できる情報収集先を選んだ。国立がん研究センターのホームページにある『急性骨髄性白血病の主な症状』 に書かれた①造血機能の障害(赤血球減少(貧血)息切れ、倦怠感など)、血小板減少((出血)あざ、歯ぐきからの出血など)、②白血病細胞が臓器に浸潤(歯肉腫脹、歯ぐきの腫れ・痛み)、髄膜への浸潤(頭痛)の症状が当てはまる。いつの間にか足には何か所もあざのような班が出来ていた。
「後は確定診断を待つだけ」そう感じた。

 素人判断はいけないが、そう感じたのには理由がある。数年前に学芸員資格を取得した際、杉並区民でも武蔵野市と東京女子大学(杉並区)の正規授業を受けられることを知った。2017年4月から武蔵野市の生涯学習の機会を利用して、日本獣医生命科学大学の動物科学科で動物衛生学(獣医学科)、動物防疫学、動物微生物学、有機農業論、動物免疫学、畜産施設論、鳥類家禽論、食品衛生学概論、動物生体機構学、動物資源科学概論を受講した。当然、養鶏業の更なる地固めが目的だ。動物と人間は違うと言うなかれ、動物免疫学と動物生体機構学の講義を受け、「免疫と白血球の役割」「骨髄の造血機能」等については概ね理解していた。急性骨髄性白血病だったらどういうことが起こっているかは判ったのである。
 だから少し紹介しておくと、政府はグローバル化に対応するため社会人の学び直しに力をいれている。武蔵野市はそれに沿って一般市民に大学でのリカレント教育の機会を開くため、武蔵野地域自由大学を設置している。特に正規授業を受けられるシステムでは、実習を除いて大学生と共に教室で学べる。平日の昼間に大学に通う時間を作るのは社会人には難しいのだが、社会での経験を経て、学生の頃と違う見方が出来る事に驚く。意識が変わると仕事も変化する。ぜひこのシステムを様々な人に気づいて貰い、利用される事を願っている。

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